maruの徒然雑記帳


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恋夢幻想〜27〜






 ー隊長


 そう呼ばれた気がした。

 反射的に振り向いて、俺は苦笑を漏らす。

 いるはずがない。

 みんな、俺が置き去りにしてきたのだ。

 それがどんなに危険なことか、俺にはちゃんと理解できていたというのに。

 そんな危険の中みんなを残し、俺は今ここにいる。

 俺は正しい判断を下せたのだろうかーその思いがずっと胸の中で俺自身をさいなむ。

 仕方がなかったのだと、そう言う俺がいる。

 そうするしかなかったのだと。

 しかしそれは自分に対するていのいい言い訳にすぎないのだと、自分でもよく分かっていた。

 確かに時間はなかった。しかしほかに何か方法はあったはずだ。

 ただ俺が、それを思いつけなかっただけで。

 すまない、みんなー目を閉じ、俺は思う。

 情けない隊長ですまない、と。

 そして祈った。

 どうか、みんなが無事であるようにと、心から。

 そのときだった。

 ずっと立ち止まったままの俺を不審に思ったのだろう。通信機からさくら君の声が響いてきた。


 「大神さん?」


 心配そうな、そして少し不安そうな声に、俺は現実に引き戻される。

 そしてその声は俺にやらねばならないことを思い出させた。

 葵叉丹を倒す。

 あやめさんを救い出す。

 そして霊子砲を破壊し、帝都に平和を取り戻す!

 くよくよしている暇はない。

 後悔なら、全てが終わった後、全部まとめてすればいい。

 今はなにも考えず、自分にできることをする…ただそれだけだ。

 みんなもきっとそれでいいと言ってくれるはずーそう思うから。


 ー私たちを信じてください、隊長


 そんなマリアの声がどこからともなく聞こえた気がした。

 俺は微笑み、そして答える。


 ー信じるよ、マリア。みんなのことも、そして君のことも

 ーそれなら行ってください。やるべきことを、果たすために

 ーあぁ。行くよ、もう


 そして、信じて待つよ。君たちが追いついてくるのをー俺はゆっくり方向転換し、さくら君を促した。


 「行こう、さくら君」


 その俺の声に、彼女もなにか感じたのだろう。彼女はなにも言わずに俺の後ろに従った。

 目の前には薄暗い通路が続いている。

 その、どこまでも終わりがないかのような道を見つめながら、俺はなぜか終着点は間近だと、そう感じていた。






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