maruの徒然雑記帳


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流れ星5






 花火大会から、2日経った。

 毎日のようにあった、みんなからの連絡はパタリとなくなった。

 確か今日から、すずかちゃんとアリサちゃんは別荘に行くって言っていた。

 はやてちゃんも家族のみんなと旅行だと言っていた。

 フェイトちゃんは何してるかな?

 暑さのせいで少し寝苦しくて、目が覚めたからベランダに出てみる。

 深夜のせいか、外はすごく静かで、空を見上げると月と星空、湿気が高いせいか土と緑の匂いもする。

 小さく深呼吸する。

 夏なのに綺麗な月が見れて、少しうれしくなる。

 そして、月から連想する人物を想う。

 あの日、ちゃんと最後まで言えなかった。

 フェイトちゃんは、どう思っているんだろう?

 <ただの友達かな?>

 そう思うと、怖くて言えなかった。

 ”…なのはさんが言ってた好きな人って、その人ですか?”

 夏休み前に私に告白してきた女の子が、屋台のところでフェイトちゃんに言った内容が蘇る。

 「そうだよ」

 声に出して言ってみる。

 言ってみて、ため息と共にその場にしゃがみ込む。

 そして、あの日の出来事を思い出す。

 入学当初から目立つから名前は知っていた。

 あの日、中庭で目があった時、すごく綺麗な子だと思った。

 金色の髪、宝石のような赤の瞳、その子の唇が「たかまち」と動いたとき、胸が高鳴った。

 そして、名前ではなかったことが少し寂しかった。

 私は知ってるよ。あなたの名前を…「フェイトちゃん…」私も彼女に返す。

 それだけのたったそれだけのやり取りだったのに、廊下ですれ違ったり、教室で見かけたりするのがとてもうれしかった。

 古文の教科書をきっかけに仲良くなれると思ったのに…

 あの視聴覚教室での出来事…どうしてフェイトちゃんがあそこに居たのかはわからない。

 教室にいた誰かに聞いたのかもしれない。

 あの時は、人を好きになる気持ちがよくわからなかった。

 だから、簡単に私を好きだと言ってくる人達の気持ちに対して嫌悪感しかなくて、ひどいことを言っていたと思う。

 たいていの子は、ああ言うと私に幻滅してもう近寄らなくなる。

 そして、ひどい人だと、遊び人だと言われた。

 どんな噂を立てられても気にしなかった。



 あの日、真紅の瞳に見られるまでは。



 「はぁ」

 追い打ちのようにため息が出る。

 あの次の日、フェイトちゃんが友達になろうって言ってくれた日からは、想いを伝えてくれる人に対していい加減な対応はしなくなった。

 誠心誠意ちゃんと向き合って、お断りしている。

 でも、悪い噂は消えてくれなくて…

 今までの自分の行いをこんなに悔いたことはない。

 フェイトちゃんに嫌われたくなくて、あの日からフェイトちゃんの事しか考えられなくて、

 話すだけでドキドキするし、目が合うと嬉しくなって胸が締め付けられるようになった。

 この気持ちが最初は何かわからなかった。

 その気持ちに気が付いたのは、視聴覚教室での一件からそんなに日が経たないある日、いつものように呼び出されて、

 「なのはさん、好きです。付き合って下さい」

 と言われたので、

 「私の何が好きなの?」

 興味本位で聞いてみた。

 「なのはさんと話すだけでドキドキするし、目が合うだけでうれしくなります。気持ちを伝えたくて…」

 その告白を聞いたとき、衝撃を受けた。

 私がフェイトちゃんを想う気持ちと一緒・・・。

 私フェイトちゃんが好きなんだ。

 私、フェイトちゃんに恋してるんだ。

 正直、そんな風に気持ちを伝えられるその子たちがうらやましかった。

 私は・・・あんなところを見られてしまって、もうそんな資格はないから。

 その子には、ありがとうの気持ちを伝え、その日以来告白をお断りする際は「好きな人がいます」と言うようになった。

 好きですとは伝えられない想い。

 でも、その結果が、あの花火大会…

 まさか、あんな形でフェイトちゃんに伝わるとは、思ってもみなかった。

 フェイトちゃんがどんな顔をしているのか怖くて顔を上げることができなかった。

 はぁ〜。

 ため息しか出ない。

 しゃがみ込んだまま立ち上がることができない。

 …もうやめよう。なんだか浮上できなくなりそう。

 ベランダの手すりに手をかけて体をゆっくり起こして、もう一度月を見上げてみる。

 「夢の中でもいいから、フェイトちゃんに会いたいな。もし、もしも会えたら…この気持ち伝えてみようかな…」

 胸に手を当てて祈ってみる。

 そのまま、ベットへ戻りゆっくりと目を閉じた。






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