maruの徒然雑記帳


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流れ星4






 屋台の食べ物を満喫して、アリサ、すずか、はやては満足そう。

 みんなに挨拶をして別れ、なのはと2人帰路につく。

 あれから、なのははあまり話さない。

 私の少し後ろをついてくる。

 心配になって街路灯の真下の明るいところで、立ち止まって振り返る。

 なのはも足を止め不安そうに揺れる瞳で私を見る。

 その瞳が、潤んで儚くて、その瞳をなのはごと抱きしめたくなる。

 その衝動に蓋をし、抑えながら、

 「なのは大丈夫?」

 と聞く。

 なのはの右手がゆっくりと私の浴衣の左側を握る。

 そのまま、なのはが前進するから向かい合ったまま距離が一気に縮まる。

 なのはのおでこが私の肩に預けられる。

 「ど、どうしたの?なのは??足痛いの??」

 歩くのが早かったのかもしれない。

 なるべく優しく問いかける。

 なのははそのままの姿勢のまま、顔を左右に振る。

 「ねぇ、フェイトちゃん…今日の…あの子が言ってたことなんだけど…」

 ”!?”

 自分の体が固くなった。

 小さな声だけれど、なのはがどのことを言ってるのかすぐに分かった。

 今日、話しかけてきた後輩の友人。

 …なのはの…

 「あのね…、あのね…あの子が言って…た事…」

 なのはの声が震えている?

 右手はさっきのまま私の左の裾を握っているけれど、左手は私の右の腕を握っている。

 その手が小さく震えてる。

 「なのは?」

 なのはの華奢な体をそっと抱きしめる。

 「!?」

 なのはの体が一瞬大きく震える。

 正直、どうしていいのか、なのはが何を言いたいのかわからない。

 話を聞きたいし、聞きたくもない。

 私の腕をつかんでいたなのはの手が、いつの間にか私の背中に回っている。

 こんな状況を使って自分はずるいと思う。

 でも、少しだけ少しだけでいいから、このままでいたい。

 「フェイトちゃん?」

 「うん?」

 なのはは、もう震えてなかった。

 私の名前を呼ぶその声が、とても心地よくて、温かくて。

 また、離れられなくなる。

 「…ううん。何でもない。…もう少しこのままで居てもいい?」

 なのはが話す振動が肩越しにダイレクトで伝わってきて、なのはの声が私の体に吸収されていくよう。

 「うん。私ももう少しこのままがいい」

 正直な気持ちがするりと言葉になって零れる。



 どれくらい、そうしていたんだろう?

 もうどれくらいこうしているかわからない。

 なのはがゆっくり動いて、私たちの間に距離ができる。

 途端に隙間風が入ってきて、体温が奪われ寂しい気持ちになる。

 「えへへ。フェイトちゃん温かいから眠くなってきちゃった」

 なのはを見ると、確かに眠たそう。

 「夏なのにね」

 私がそういうと、眠そうな目をこすって、えへへってまた小さく笑う。

 「帰ろうか」

 私がそういうと、

 「うん」

 って言いながら、なのはが手を繋いでくる。

 なのはの手を少し強く握って、歩き出す。

 なるべくゆっくり、少しでもこの時間が長引くように…






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