maruの徒然雑記帳
流れ星3
2年に上がると、なのは、はやて、アリサと同じクラスになった。
その上アリサの友達のすずかも同じクラスになったので、大体は5人で行動することが多くなった。
私の恋心はまだ健在で、去年より大人びてきたなのはにドキドキしっぱなしで、辛いこともあるけれど、でもこの気持ちは秘密…
私は、友達という関係を選んだから。
きっとこの気持ちを知られたら、友達の関係が壊れてしまう。
それだけは、ダメだから。
今はこうやって友人としてそばにいることができる。
それだけで満足だと自分に言い聞かせる。
「もうすぐ夏休みね。来週花火大会があるから、みんなで行かない?」
とアリサが提案した。
「いいね。浴衣とか着ていきたい♪楽しみだね」
とすずかが続ける。
「ええなぁ〜花火大会〜。ええなぁ〜ゆかた〜」
はやても何かに思いを馳せているよう。
なのはも乗り気で花火大会に行くことが、すんなりと決まった。
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夏休みが始ると、みんななかなか会えなくなっちゃうのかなって思っていたけれど、そんな予想とは裏腹に連日お誘いのメールがあって図書館へ行って宿題したり、誰かの家にお邪魔してゲームしたりと楽しい時間を過ごしているうちに、花火大会の当日がやってきた。
みんなとも事前に打ち合わせして、全員浴衣。
私は、色々悩んだけれど、紺色をベースにした牡丹柄と撫子が合わさった浴衣にした。
待ち合わせ場所に行くと、みんなもう着いていて、手を振って挨拶をする。
はやては、クリーム色をベースに花と燕柄の動きのある浴衣。
はやての髪の長さだと、すっきり見えて見違えるよう。
アリサは、白ベースの桜と牡丹の組み合わせ。
所々にグリーンが入っていてそれがアクセントになっていてよく似合っている。
すずかは、カラフルな菊がちりばめられた、華やかな浴衣。
髪の色によくあっていて、大人っぽく見える。
みんな、それぞれかわいくてすごく似合っている。
「ごめーん。遅れちゃった?歩き慣れなくて…」
なのはは、どんな浴衣にしたのかな?
なのはの声がした方を振り返る、…一瞬で目を奪われる。
白地に金魚柄の浴衣。
すごくかわいいのに、大人っぽく着こなしていて、髪もアップにまとめて項とか色っぽくて…
どうしよう。
すごく綺麗だ///。
「フェイトちゃんあんまり見たら恥ずかしいよ。似合わないかな?」
「あ…ごめんね。あまりにも綺麗で、見とれちゃって…すごく似合ってるよ」
って本心を言うと、
「…あ、ありがと。フェイトちゃんもすごく大人っぽくてかっこいいよ」
ってなのはが真っ赤になって答える。
二人して真っ赤になってると、
「いちゃついてないで、予約場所へ移動するわよ」
とすかさず、アリサが突っ込んでくる。
今日の花火大会の為にアリサが予約してくれていた場所へ移動する。
そこは、ほぼ打ち上げ箇所の真下。
花火が打ちあがると、どこまでもどこまでも小さな火の玉が打ちあがり、暗闇に火玉が飲み込まれたと思ったら、”ドンッ”と言う地響きのような振動が聞こえ大きく花開きそのまま目の前まで花が垂れる。
「「わぁぁぁっ」」
感嘆の声が上がる。
私の少し前になのはがいて、なのはの前にはやて、アリサ、すずかがいる。
首を少し戻してみんなを見てみると、ほぼ首が90度になっており、長時間だと首がおかしくなりそうだなって思って、少しおかしくなった。
なのはは夢中で上を見ていて、大きな花火が花開くたびになのはの顔が照らされて、花火よりもそちらに見入ってしまう。
上を見すぎたせいか、なのはが少しよろけたから、それを後ろからそっと支える。
なのはの体が一瞬震える。
驚かせたかな?
私はそのままなのはの両肩に手を置いて、少し引き寄せ自分に寄りかからせる。
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すぐそこに、なのはの顔がある。なのはも私の肩に頭を預けながら、上を見ている。
少し息を吸い込むと、なのはの香りがして、心臓が静かに跳ねる。1年前校庭でなのはに最初にあったときもこの香りがした。
私はもっとこの香りを嗅いでみたくて、顔を下に向けそっと息を吸い込む。
「うっ…ん…」
なのはから、そんな声が漏れたので、慌てて顔を離す。
なのはの顔は、真っ赤…?なような気がしたけれど、きっと花火の反射だ。
浴衣からのぞく白い首筋に心臓が跳ね、無意識に息を飲んでしまう。
鼓動が早くなってしまって、その動揺がばれないように、少し距離を置こうと肩を押し戻そうとすると、なのはの肩をつかんでいる私の右手になのはの右手がそっと重なり、私の行動を停止させる。
そのまま、少し強く握られる。
少し、下を向くとなのはは、花火ではなく私を見上げていて、視線が絡み合う。
蒼眼の中は花火が反射して、パチパチと光っている。
少し顔を動かせば、届く距離になのはの唇。
叶うことなら、この唇に触れてみたい。
…他の子はこの唇に触れたのだろうか。
ふとよぎるそんな事。
そう考えると、何かが突き刺さるかのように心が痛む。
大きく息を吸って、呼吸を整える。
なのはにぎこちなく笑顔を返して、私は、また、頭上の花を見上げる。
クライマックスらしく、怒濤のような花火の連射が続き、ピタリと静かになる。
シーンと静まりかえった後、辺りがざわつき出す。
この時間なのはに触れていただけで幸せで、私は、なのはの両肩を少し前に押して、手を離す。
なのはが少し不満そうに、私を見る。
前列にいたはやてが振り返りながら、
「きれいやったな。」
と子供みたいな顔をして言う。
「うん。綺麗だったね」
と、わたしが返すと、それぞれ、どの花火が好きかとか、ハートを見たとかキティちゃんがいたとかの話で盛り上がった。
「お腹すいたね。私、屋台の食べ物食べてみたいな」
とアリサが言う。
「私も食べてみたい」
とすずか、
「そっか、二人とも屋台とは無縁やもんね。今日はたくさん食べような。まずは、焼きそば、綿あめ、リンゴ飴?あちゃーどれも列ができちゃってるな〜」
私とはやてで買いに行こうとすると、ありさとすずかも買ってみたいということになり、4人でばらばらに買いに行くことになった。
「なのはは、ここで席とっておいて」
と言い残しみんなちりじりに散っていく。
「お待たせなのは」
綿飴を買って席に戻るとみんなはまだ戻ってきていなくて、綿あめをなのはに渡しながら雑談をしていると、
「フェイト先輩!」
と後ろから声をかけられた。
振り向くと、委員会の後輩とその友達らしき子が居た。
「こんばんは、フェイト先輩も花火見に来てたんですね?わぁ、浴衣姿とても素敵です」
ありがとうと返事をして、後輩と一緒に居た子に気が付いて、視線を向けるとその子は、なのはのことを見ている??
見てると言うより、睨んでる??
気になってなのはの方を見るとなのはは、全然明後日の方向を見ている。
…あっ。…そういうことか。
そこで、気づいてしまう。
なのはの遊び相手。
…きっとこの子は、私よりなのはの事を知っているんだろうな。
そんなことを考えると、
「……っ…」
胸に痛みが走り、思い知らされる。
私は、なのはと仲良くなって、なのはのことを独占でもした気でいたのかな?
なのはの事を見ていた子が、その鋭い視線を私に移す。
まるで、値踏みされてるみたいに、爪先から、頭まで舐めるように見られる。
困ったな私、こういうの苦手……
自分の胸の前に手を当てて、少し後ずさる。
私の前になのはが立ち、その子に向かって、
「何?」
と一言だけ聞く。
なのはの声はとても低くて、私からは顔も見えない。
何だか知らない人みたいで、すごくなのはが遠い気がしてしまう。
なのは…
その子もビックリしたようで、少し怯みながらも言い返す。
「…なのはさんが言ってた好きな人って、その人ですか?」
えっ?なんて言ったの?
「……………」
なのはは、何も答えない。
張り詰めた空気が流れる………
最初に私に話しかけてきた、委員会の後輩も困っているようだ。
ど、どうしよう。
そこに、
「「おまたせー」」
とみんなが帰ってきた。
委員会の後輩が、みんなに気づき、
「お疲れさまです!……あの…すいません!失礼します!!」
と一礼し、一緒にいた、友人の手を引いてその場から、立ち去ってしまった。
「なんなの?」
と聞いてくるアリサ、
「修羅場やったん??」
と嬉しそうに聞いてくるはやて、それを、
「もぅ、アリサちゃんにはやてちゃんだめだよ」
って窘めてくれるすずか。
とりあえずみんなが帰ってきてくれたことで、その場が治まったことを感謝する。
なのはは、何も言わない。
下を向いてしまっているから、顔もよく見えないし………
まだ、怒ってるのかもしれない。
でも、さっきの子が言った言葉が気になる。
”…なのはさんが言ってた好きな人って、その人ですか?”って言っていた。
……あれって、私のこと?なのかな?……///
まさかね。
そんな都合のいい話あるわけないか…何かの勘違い…
そんな事を考えていると、はやてがなのはの顔を覗き込み、
「おっ、なんや?なのはちゃん顔真っ赤や、どないしたん?」
と聞いてる。
その後、‘ゴッ‘と音がして、はやてが後頭部を押さえたままうずくまった。
全員の目が伏せられる。
なのは…、怖いよ。
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