maruの徒然雑記帳
恋夢幻想〜21〜
ものすごい音を立てて、空中戦艦ミカサの主砲が火を放つ。
それは一瞬で聖魔城の強固な門をうち砕き、そこにぽっかりと進入口を開けた。
すさまじい威力だった。
その入り口に向かって、ゆっくりと翔鯨丸が吸い込まれるように消えていく。
米田は声もなくその様子を見守った。
引き結ばれた口元が何かをこらえるように震えー米田は祈るように空を仰ぐ。
「帰って来いよ。誰一人欠けることなくな…」
小さくつぶやくように言った。
だが米田のその言葉をうち消すように警報が鳴り響く。
「指令!降魔が一斉に聖魔城へ向かっています」
「なんだとっ」
かすみの報告を聞いた米田の顔が緊張に引き締まる。
「んなことさせるかよ。おい、由里」
「はい」
「各部署に伝えろ。奴らにありったけの弾をぶち込んでやれってな。一匹だって見逃すんじゃねえぞ。これ以上、あいつらの負担を増やすわけにはいかねえからな」
「了解」
「よーし、いい返事だ。奴らに一発かましたら、全速前進。奴等の群につっこんで注意を全部このミカサに引きつけ、一匹残らず殲滅する」
それはほとんど捨て身の作戦だった。
小回りの利かないミカサが降魔の群に囲まれたらどうなるか、ブリッジのメンバーにもそのことは容易に想像できた。
中に進入されたら最後、いまのミカサにそれを迎え撃つすべはない。
だが米田の命令に反論するものは誰一人としていなかった。
みんなが黙って静かに頷く。
米田は誇らしそうに彼らを見つめーそれから目の前に広がる降魔の群を睨みつけ、そして叫ぶように命令を下した。
「よし、行くぜ!!気ぃぬくんじゃねぇぞ。こっからが俺達の戦いだ」
ミカサがゆっくりと前進を始め、その無数の砲門が開かれる。
いままさに、死闘が始まろうとしていたー
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