maruの徒然雑記帳



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流れ星7(R15)最終話






 宿題に夢中になっているうちに、夕飯の時間になったのでリンディさんが用意してくれていた、食事を温めて机に並べる。

 「ぅわぁ〜おいしそうだね♪」

 「うん。すごくおいしそう」

 「「いただきまーす」」

 声を合わせて食べ始める。

 夕飯をおいしくいただき、私が洗い物をしている間に、なのはにはお風呂に入ってもらう。

 なんだかこうしていると、一緒に暮らしているみたいでなんだか幸せ。

 洗い物をしながら、つい鼻歌が出てしまう。

 不意に背中に何かが当たる。

 びっくりしてお皿を落しそうになって、首だけ振り返るとなのはが私の背中に張り付いている。

 「な、なのはっ?」

 いつお風呂から上がったのだろう?慌てて声を掛ける。

 「フェイトちゃんかわいい。なんか、私たち新婚さんみたいだね」

 背中に添えている手がいつの間にかお腹を包み込むように前で交差される。

 なのはの胸が背中にあたる。

 「なのはっ??ちょっ!」

 両手がふさがっているから、体を左右に捩じってみる。

 でも、なのはは離れてくれなくて、それどころかより一層強くしがみついてくる。

 だから、そこもより一層押し付けられる。

 お風呂上がりの為、パジャマの下はダイレクトで…その感触と共にお風呂上がりの香りがして…えっ?新婚って言った??

 もう、なのはに振り回されっぱなし。

 なるべく背中を意識しないように、深呼吸をして冷静な声で

 「ほら、なのは危ないから…ね」

 って言うと、おなかの手が緩まって離れていく。

 自分の理性を褒め称えながら、作業を終わらす。

 水を止めて、タオルで手を拭きながら振り返ると、なのはは少し拗ねたような顔でこちらを見ている。

 その顔がかわいくて、まだ乾いていないなのはの髪に手を当てて、

 「おいで、髪乾かしてあげるから」

 って浴室に戻りドライヤーを当ててあげる。

 自分の家のシャンプーはこんなに良い匂いがしたのかと驚くほどなのはが使うといい香りがする。

 なのはは目を閉じて、ジッとしている。

 なのはが目を閉じていることをいいことに鏡越しになのはをみる。まつ毛が長いなとか鼻筋がすっきりしてるなとか観察しているといきなりなのはの目が開く。

 鏡越しに目が合う。

 なのはも無防備だったかと思うけれど、私も相当部防備だった。

 二人して、真っ赤になって俯く。

 私は慌ててドライヤーの作業に戻る。

 根元まで乾いたのを確認して、ドライヤーのスイッチを切る。

 「私これからお風呂入っちゃうからなのは部屋で待ってて、リビングでテレビ見ててもいいからね」

 と伝えると、

 「うん。フェイトちゃんの部屋にいるね」

 と言ってなのはは浴室を後にする。

 私は湯船に浸かりながら、今日のなのはの行動を振り返る。

 今まで手を繋いだり、スキンシップは多い方だと思うけれど、今日はなんだかいつもより割合が多いような気がする。

 このまま本当に友達という気持ちを貫けるのだろうか…?

 私の理性と心臓は持つのだろうか??

 そんな事を考えながら、お風呂から上がり髪の毛を乾かし始める。

 そもそも、具体的にどこがというわけではないのだけれど、今日のなのはは少しおかしいような気がする。

 ドライヤーをおいて鏡を見ながら<はぁ…>自然とため息が出てくる。

 自室に戻るとなのはは雑誌を見ていた。

 そろそろ布団を引こうかな。

 確かリンディさんが隣の部屋に布団用意してくれていたはずだし…

 「なのは、布団もってくるね」

 って部屋を出ようとすると、

 「なんで?」

 と想像もしなかった答えが返ってくる。

 聞き間違いだろうか?

 「なんで??」

 もう一度同じ言葉が聞こえる。

 何の?なんで?なんだろう?まだ眠くないから大丈夫だよって事かな?

 なのはの質問にフリーズしていると、

 「わざわざ布団もってこなくても、フェイトちゃんのベット結構大きいから二人で寝ても大丈夫だよ??」

 なのははそう言うと、私のベットに入り隣のあいているスペースをポンポンと叩きながら、ドアの前で突っ立ったままの私に優しい視線を向ける。

 私は戸惑ってなのはを見ることしかできない。

 なのははそんな私の様子を見て、不安そうに眉を下げて、

 「嫌かな?」

 と小さくつぶやく。

 私の中で、何かが小さく弾けた。

 「嫌じゃないよ」

 声が自分の声じゃないみたい。

 ドアの横のスイッチで電気の光度を落す。

 薄暗くなった部屋で私は自分の胸の前で拳を作り、なるべくゆっくりと息を吐きながら、ゆっくりとベットに近づく。

 意識しないと思えば思うほど、意識してしまう。

 好きな人が、側にいるだけで胸が高鳴るのに一緒に寝るなんて……

 自分の心臓が、耳にあるんじゃないかと思うくらい、ドクドクとうるさく鼓動する。

 なのはは、何とも思ってないのかな?

 …何だか自分だけが子供でドキドキしてて情けない気持ちになる。

 なのはが示したベットのスペースに入り込む。

 どこを向けばいいかわからなくて、なのはに背中を向けてしまう。

 ふと、背中が温かくなる。

 なのはが、背中に体を寄せていると気が付くと、鼓動が、すべての血管が沸騰するのではないかと思うくらい脈打ち高鳴る。

 口の中かがカラカラになって、自然と呼吸が荒くなる。

 それをごまかすために大きく深呼吸をする。

 やっぱり、今日のなのははなんかおかしい…

 「ねぇ、フェイトちゃん」

 「うん?どうしたの?」

 「フェイトちゃんは、こんな事言われても困るだけかもしれないけれど…」

 なのはの声がとぎれとぎれで、心配になる。

 「…」

 何のことだろう?

 「わたしフェイトちゃんが…」

 パジャマ越しの背中になのはの唇の感触が伝わってくる。

 なのはの息が当たる部分が熱い。

 はぁ、なのはは、少しため息を付いてから、

 「……好きなの」

 と続ける。

 「…?!」

 えっ?!

 なんて、なんて言ったのなのは?

 言葉の処理能力が追いつかない。

 脳内のフェイトを総動員で会議が始まる。

 落ち着け落ち着け………なんて言った?



 好きなの…………

 …………………///



 ガバッとベットから上半身を起こす。

 首をなのはの方へ時計仕掛けの人形みたいにゆっくりと向けると、なのはは、真っ赤な顔で少し困ったようにこちらを見ている。

 瞬間、視聴覚室でみた光景がフラッシュバックする。

 ……あのときみたく、自分も他の子のように遊ばれてしまうのかな?

 一時期はそれでも、他の子と一緒でもいいと思ったこともある。

 でも、なのはと友達になってもっと好きになっていくに連れて、自分だけを見てほしいと、なのはを独占したいと思うようになっていた。

 「…なのは。なのはにとってこれは、お遊びなの?」

 拳を握りしめて、目を閉じながら、吐き出すように言う。

 「ちがっ……」

 なのはも慌てて上体を起こす。

 「わたしも、他の子と一緒なの?」

 この前の花火大会で会った子と一緒………。

 泣きたくなんかないのに、涙が溢れてくる。腿に置いた震える自分の手の甲に、ポタポタと滴が零れる。

 我が儘だってわかっている。

 でも、他の子と一緒なんて嫌。

 自分だけ見てほしい。

 自分にこんな独占欲や嫉妬心の感情が有ったなんて知らなかった。

 「フェイトちゃん…いきなりごめんね。混乱するよね。私、なんだか舞い上がっちゃって、フェイトちゃんの気持ち考えないで押しつけちゃった。……でもね、こんな気持ち本当に初めてなの」

 「……」

 「高校に入学したての頃は、私のことを何も知らない人たちが、告白してくる事が理解できなくて、酷いことを言って幻滅させるようにしていたの。

 でもね、あの日フェイトちゃんに視聴覚室で見られたときに、他の人にはどう思われてもどんな事を言われてもいいと思っていたのに、フェイトちゃんだけには、他の人と同じ様に思われたくなかった。

 そんな気持ちに最初は戸惑ったんだけど、次の日フェイトちゃん言ってくれたでしょ?【友達になろう】って、…私嬉しくて、あの日からフェイトちゃんに惹かれて、気が付いたらすごく…好きになっちゃって…」

 「なのは……」

 「他の!他の誰からどう思われようとかまわない!!でも!でもねフェイトちゃんには誤解されたくないの!だから、ちゃんと話すね。

 フェイトちゃんのこと好きになってから、今まで告白してきた子の気持ちが少し分かるようになったの。だって、私もフェイトちゃんの事すべてわからないのに、好きになっていったから。

 放課後一緒におしゃべりしたりするだけで、ドキドキして楽しくて。人を好きになる気持ちを知ったから、だから、あれ以来告白されても【他に好きな人が居ます】って、きちんと断るようにしたの。」

 そういえば、花火大会で会った子はなのはに、‘なのはさんが好きな人ってその人ですか?’と聞いていた。

 なのはが言っていることは、本当の事なの?

 なのはは、私が…私のことが好きなの?

 本当に信じていいのかな?

 「ごめんね。フェイトちゃん私の気持ちばかり押し付けて、嫌な思いさせちゃったね」

 「ち、ちが、う、ちがうよ。なのは。」

 目をこすり、鼻をすすりながら、ただでさえ赤い瞳をより一層深い赤にして、

 「とても、嬉しいんだ」

 と伝えた。笑えてるかわからない、涙も出てるから、笑えてないかもしれない。

 ただ、自分では思いっきり笑顔を作ったつもりだった。

 なのはは、すごく驚いた顔をして、それからやっぱり同じように、笑っているのか泣いているのかわからない顔で、思いっきり笑顔を返してくれた。

 「フェイトちゃん、わたし、私じゃだめかと思って、何度も伝えようと思ったのに、怖くて、言えなくて」

 なのはの蒼いきれいな瞳から、ポロポロと宝石のように滴が零れて、

 「何度も諦めて。でも、あきらめた瞬間もっと強くフェイトちゃんに惹かれて…フェイトちゃんが大好きで、毎日大好きになっちゃって…あーもう、私何言ってるんだろう…。めちゃくちゃだね。」

 涙を拭いながら、困ったように笑ってるなのはが愛おしくてそっと肩を抱きしめる。

 なのはもそっと私の背中に手を回し、顔を肩に預けて、抱きしめてくれる。

 しばらくそのままで居ると、お互いに少し落ち着いてきて、少し体を離す。

 離れたところから、途端に体温が奪われていく、でも私はなのはにどうしても言ってほしいことがあって、お互いベッドで向かい合った。

 足を崩してるのも変だから、私が正座をすると、なのはも正座して、ベッドの上で正座して向かい合うのも変かと思うけど、その姿勢のまま伝える、

 「なのは、ちゃんと目を見て言って欲しい」

 「うん。フェイトちゃん、私、フェイトちゃんが好きです。出来たら、これからも一緒に居たいし、あの、付き合ってほしいです」

 正座しながら、両膝の上で、両拳を握りちゃんと目を見てと言ったのに、途中から下向いて目瞑っちゃってるなのはをみながら、なんか侍みたいだなって想像しちゃって不謹慎にも口の端があがってしまう。

 なのはに見られたら、怒られると思って必死で口元を戻す。

 なのはを見ると、膝に置いた手が震えているのに気が付き、少し息を吐いて、気持ちを整えて、なるべくゆっくりと言葉を紡ぐ。

 「なのは、なのは、こっちを見て」

 なのはの堅くつむった目から、力が抜けゆっくりと開く。なのはも少し息を吐き出し、顔を上げる。

 「やっと目があった」

 「だって、フェイトちゃんからの答えが無いし、聞くのが怖い。さっきは、嬉しいって言ってくれたけど、どういう気持ちなのかわからないし…」

 また、下を向いて目をつむりそうになってしまったので、

 「嬉しいよ。私もなのはの事が大好きで、付き合いたいと思っていたから。でも、無理だと思ってた。他の子と同じじゃ嫌だったから。私、すごく独占欲強いみたいだから、ヤキモチいっぱい妬いちゃうよ。いいかな?」

 「私の方が、やきもちやきだもん。フェイトちゃんモテるし」

 少し口を尖らしながらなのはがそう言う。

 「なのは…これからは恋人としてよろしくお願いします」

 なのはの顔が一瞬で真っ赤になり、俯き、

 「フェイトちゃんずるい。その笑顔ずるいよ。瞬殺なの。私以外の前でその顔禁止ね」

 そう呟いている。

 「なのは」

 そう呼んでみる。

 なのはが、真っ赤な顔のまま正座の足を崩し四つん這いになってこちらへ近づいてくる。

 軽くベットがきしみ、顔がゆっくりと近づいてくる。

 桃色の唇がスローモーションで近づいてくる。

 蒼の瞳がゆっくりと閉じられていく。

 自分の唇に、少しひんやりしていて、柔らかい感触がひろがる。

 ちゅ、と小さな音がして少し離れる。

 もう一度感触を確かめたくて、なのはが離れた分の距離を自分から詰める。

 さっきとは、角度が少し変わってそれでも、柔らかさはさっきのままで、それを確かめてから、また角度を変える。

 呼吸をどのタイミングですればいいのか解らない。

 そもそも、呼吸ってどうするのかよくわからなくなったところで、唇が離れる。

 お互い息を吐き出す。

 多分同じ事考えてた?みたく2人で笑いあって、もう一度キスをする。

 お互いの感触を確かめる。

 何度も何度も唇を触れ合わせる。

 少し距離をあけるとお互いに息が少しあがっている。

 心拍数と呼吸数が比例していない。

 体が、酸素をほしがって二酸化炭素を吐き出したがっているけれど、私達はそれをお互いの唇で塞いでしまう。

 でも苦しくて、離れると寂しくて…

 「フェイトちゃん…」

 なのはが私の襟元を握りながら、引き寄せる。

 んっ…

 ちゅ…

 離れると、

 「なのは、もいっかい」

 今度は私がなのはに近づく。

 唇を合わせるだけのキス。

 角度を変えて、なのはの下唇を自分の唇で挟んでみる。

 さっきより、たくさんの面積でなのはの柔らかさを感じる。

 もっと、深くなのはを感じたい…

 その時、なのはの舌が唇の間から覗いた。

 隙間から、自分の舌を入れてみる。

 んっ…ふ…

 どちらのかわからないけれど、吐息が漏れる。

 体に力が入らないのに、抱きしめあう腕はお互いを引き寄せる。

 そのまま、ベットに沈み込んでいく…



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 次の朝、帰宅したリンディさんがフェイトの部屋をそっと開ける。

 そこには幸せそうに眠っている、二人。

 「あらあら。次からなのはさんが泊まりに来るときはお布団はいらないわね」

 と呟いてそっとドアが閉じられる。






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