maruの徒然雑記帳


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流れ星1






 <あかんよ。フェイトちゃん、あの子は止めとき>

 はやてに目で制される。

 <うん。わかってる。心配しなくても大丈夫>

 はやてにアイコンタクトで、そう返す。

 これ以上好きになっちゃいけない。

 わかってはいるけれど、つい、目で追ってしまう。

 始めて彼女を見かけたのは、高校入学してから間もなくの事。



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 同じクラスになったはやてと、噴水の見えるベンチでランチを食べている時。

 特に何か出来事があったわけじゃなく、ただ、何となく彼女に惹かれた。



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 「やっと、学校生活にも慣れてきたなぁ〜フェイトちゃんも告白ラッシュやっと落ち着いたんちゃう?最初は驚いたわ〜」

 「私もびっくりした。でもとりあえずは、学校生活も落ち着いたよ。はやてとも仲良くなれたしね。よかった」

 「こっちのセリフや。でもフェイトちゃんせっかくの高校生活、誰かと付き合ったりしてエンジョイとかせーへんの?」

 「えっと、だって名前も知らない人ばかりだし、付き合うってよくわからないし…」

 「好きな人とかおらんの??」

 「うーーん。好きな人か…よくわかんないや…」

 なんて話していると、風上の方からふわりといい香りがしたので、何気なくそちらを見ると、亜麻色の髪をサイドにまとめた蒼い瞳をした女の子と目が合う。

 <ぅわっ、綺麗な子…>

 その子も私の方を見ていて、見つめあったまま目を少し細めてクスリと笑った。

 目を奪われるというのはこういうことを言うのだろうか。

 初めて、感じる感覚に戸惑うばかりで、食べかけのおにぎりをそのままに、ただその美しい人を見つめることしかできなくて。

 そんな様子を見ていたはやてが、

 「Bクラスの高町さんや」

 と私に耳打ちをする。

 「たか…ま…ち…さん?」

 はやてが言った名前を声にしていってみる。

 声が聞こえる距離ではないけれど、私の唇の動きを読み取ったのか、高町さんが一瞬驚いて、その答えのように<またね、フェイトちゃん>と唇を動かした。

 そしてもう一度、クスリと笑って、そのまま校舎の入り口の方に歩いて行ってしまった。

 その一連の動作を見ていたはやてが、

 「あんま、こないなことは言いたくないんやけれど、高町さんあんまりいい噂聞かんよ。」

 「どんな噂?」

 「告白ラッシュを片っ端から断るフェイトちゃんと受け入れるなのはちゃんって言う事や。」

 「へぇ〜なのはって言うんだ。高町なのは…か」

 「そこっ?!あちゃ〜もうあかんね。ま、あたしは忠告したよ」

 はやての心配をよそに、私の胸はドキドキしていた。



 それから、なんとか高町さんと話す機会を作りたくて、忘れてもいない教科書を借りにBクラスのアリサのところに行くようになった。

 どうしてこんなに彼女が気になるのかが知りたかった。

 高町さんも私の事知っていたようだったし…あの日、遠くからだったけれど確かに”フェイトちゃん”って言っていた。

 それって、少なくても名前は知ってるってことだもんね。

 アリサとは委員会が同じではやてとも仲がいいから、よく話すようになった。

 「ごめんね。アリサ古文なんだけど貸してくれる。」

 「あんた、また忘れたの?少し忘れ物多いんじゃないの??」

 なんていいながら、机の中を見てくれている。

 なんだかんだ言っても優しい。

 「あー。今日うち古文ないから、持ってきてないわ。他に持ってる人いないかしらね?」

 ってアリサが言いながら周りを窺う。

 「ありがとう。大丈夫隣の席の子に見せてもらうから」

 って言ったところで、

 「はい。これどうぞ」

 って古文の教科書が目の前に差し出される。

 教科書からなぞって目線を上げると、高町さんがいて笑顔でどうぞって言ってくれる。

 私はドキドキしながら、教科書を受け取り、

 「借りてもいいの?えっと・・・高町さん」

 と言うと、

 「なのは…なのはだよ…高町なのは。」

 「あ、ありがとう。なのは。私は…」

 と教科書を受け取りながら自己紹介をしようとしたら、

 「知ってる。フェイトちゃんでしょ。よろしく」

 なのはが差し出してきた手の意味が分からなくて思考が止まる。

 でもすぐに握手だということに気が付き慌ててその手を握る。

 柔らかくて、温かい。

 「なのは、なんであんたが古文の教科書持ってんのよ?」

 と、アリサちゃんは私たちが握手している手を怪訝そうに見ながら言う。

 「うん。昨日荷物が重かったから置いて帰ったの。フェイトちゃんBクラスは当分古文の授業無いから返すのはいつでもいいよ」

 なのはは笑顔でそう言って、手をひらひらしながら自分の席に戻る。

 「はぁ」

 アリサが複雑そうな顔をしてため息をつく。

 何か言いたそうだけど、でも特に何も言わなかったので、アリサに挨拶だけして教室を後にした。



 古文の授業が始まり、教科書を開くと丁度今日やっている授業内容のところにアンダーラインが何本か引いてある。

 アンダーラインの横に、小さくテストにでそうとか、要点をまとめるとかが、きれいな文字で書いてあり真剣に授業聞いてるなのはを思ってなんだかうれしくなってしまう。

 今日思いもよらず話すことができた。

 やっと、お互いの名前を声に出して言えた。

 まめにBクラスに通った甲斐がある。

 ”なのはか・・・高町なのは。”心の中で名前を読んでみる。

 「…トちゃん!フェイトちゃん!」

 はやてに呼ばれて、現実に戻る。

 「あれ?授業は?」

 「とっくに終わったよ。大丈夫?フェイトちゃん?ひどい呆け顔しとるよ」

 「あ…うん大丈夫。次教室移動だよね。行こうか」

 少し恥ずかしくなって、急いで席を立つ。

 「フェイトちゃん次の授業はまだ、早いよ! ”んっ!?” …あれ?この教科書…ふぅん」

 と言いながら、はやてはなのはから借りた教科書を手に取る。

 「フェイトちゃん?いつ高町さんと仲ようなったの?」

 なのはから借りた、教科書の裏をみながらはやてが聞く。

 裏には「高町なのは」としっかりとした文字で書かれていた。

 「あ。うん。アリサに借りに行ったら、持ってなくて…そしたら、その…なのはが貸してくれたの…」

 何も悪いことをしたわけではないのに、はやての詮索につい回答がしどろもどろになってしまう。

 「ほほぅ。”なのは・・・”ねぇ?で、今教室移動に持っていこうとしている古文の教科書は誰のものなん?」

 「!?…」

 はやてから指摘された私の手の中にある教科書をゆっくりと見る。

 ”間違った!?”動揺が隠せない。

 急いで机から出したはずの化学の教科書と自分の古文の教科書を間違えた。

 嫌な汗が出てくる。

 「忘れてもいない教科書をねぇ…まっええわ。これ以上詮索すると、フェイトちゃんかわいそうやし…さ、いこか」

 はやてはそのまま何も言わずに、次の授業の用意をして席を立ち歩き出した。

 ”助かった。”その時はそう思った。

 まさか、これが弱みになるなんて…






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