maruの徒然雑記帳
「星降る夢で逢いましょう」様より。
リリカルなのはのなの×フェイの短めSSです。
始まりはシリアスですが、最後はラブラブ。フェイトちゃん、うらやましい♪
Day Dream
はぁ、は、はっ…
自分の息しか聞こえない。
そこは、漆黒の世界。
ただ、私はそこを歩いている。
ただの<無>の世界。
光も色も何もない。
何に向かって歩いているのかもわからない。ただ歩くだけ。
一瞬世界がぐにゃりと音を立ててゆがむ。
キーンと耳鳴りのような音がする。
足に何かが当たったような気がして、下を向く。
何かが足もとでもぞもぞと動いている。
それが何なのか目を凝らしてみてみる。
真っ黒な無数の手が足元から突き出てくる、そぢて自分の足に絡みつく。
手は私の足首を掴みすごい勢いで下に引っ張られる。
それでも私は前に進もうとする。
手はどんどん増えて、最初は足首を握っていた手は、もう膝の辺りを掴んでいる。
下へ下へと引きずり込まれ、私は膝から崩れ落ちる。
体を支えようとして前のめりに手を付くと、その手も真っ黒な手に掴まれ下に引きずりおろされる。
もう体の半分が、黒い手に包まれている。
自分の顔の前にひときわ大きな手が現れる。その手が自分の顔を覆うように伸びてくる。
よけられない。
このまま、私のすべては闇に飲み込まれてしまう。
手がぶつかる瞬間
「ぅああああああっ〜ぁぁぁ〜」
自分の口から自分の声でない叫びが上がる。
瞬間、目が開く。
はぁはぁ、自分の呼吸が聞こえる。
耳元で血液がドクドクと激しく音を立てている。
体が小刻みに震えている。
恐る恐る自分の手を見てみる。
震えているだけで、なんともない。
その手で、自分の顔を触ってみる。
目じりから耳につながるラインが濡れている。
汗なのか涙なのかわからない。
掌で自分の両目を塞ぐように覆う。
<…夢…か…>
ほっとして息を吐く。
「どうしたの?フェイトちゃん?」
隣から声がする。
暗い部屋の中、自分の掌を外して横を見ると、蒼い瞳が心配そうにこちらを見ている。
動く気配がして、私の手がなのはの両手で包まれる。
「冷たいよ…震えてる。怖い夢でも見たの??」なのはの声がとても優しい。
その声が心の中にしみこんで来るようで、私は素直に、
「うん」
と小さく答える。
「おいで」
体を引き寄せられて、私はなのはの胸元に抱き寄せられる。
温かくていい匂い。
頭を撫でなれながら、まるで、光の繭に包まれているみたいで…。
大きく息を吸い込むと、さっきまでの恐怖はもうなくて、そのままゆっくりと目を閉じる。
すぐに襲ってくる眠気。
「今度はいい夢が見れるといいね」
と優しい声が聞こえた気がした。
おわり。
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