maruの徒然雑記帳


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「星降る夢で逢いましょう」様より。

リリカルなのはなの×フェイの短めSSです。

R-18です。

もっと素直になればいいのに……とは素直な私の感想です。





月の海






「えっ??」

緊急に呼び出された会議室の中で、私はそんな気の抜けた声しか出せなかった。

「せやから、フェイト・T・ハラオウン執務官とランスター執務官が行方不明なんよ」

「えっ?!でも、今回のはただの惑星調査って聞いてるよ?」

惑星調査の場合は、その惑星に生体反応や環境調査のためのもので、普段はそれほどの危険なミッションではないはず。

「そうなんだ。我々もそれほど危険な事ではないと判断していたのだが、もう24時間以上通信連絡がない。あの惑星は大気は通常なんだが、地場の関係で極端に魔法能力が落ちるんだ。他の人員は今他の厄介な案件に駆り出してしまっている為、捜索に人員を割けない。そこでだ、高町一等空尉様子を見に行ってくれないか?」

 真っ直ぐに私をみながら、クロノ君がそう告げる。

 「もちろん、いくよ」

 クロノ君の視線をしっかり受け止めて、そう告げると席を立つ。

 「ちょぉ、待ちってなのはちゃ・・・高町一等空尉。いくら何でも1人では行かせられんよ」

 はやてちゃんが慌てて制す。

 「「私が行きます」」

 声の主は複数人いた。

 「スバル、ギンガ……」

 「すまないが、救出船は定員が2名用だ。どちらかにしてくれ」

 クロノ君の言葉に引っ掛かりを覚える。

 「えっ?!ちょっと待って下さい、2名しか乗れないってどういうことですか?」

 私は定員人数に驚いてそう聞き返す。もし、フェイトちゃんたちと合流しても、連れてかえってこれない。まさか…?

 「そうや、高町一等空尉が思っとる通りや」

 「八神部隊長!」

 クロノ君が制す。

 「隠したって分かってしまうことやろ?不信感を持って行くのでなく、事実を知って行くべきやとあたしは思うんやけど」

 はやてちゃんの言葉を受けてクロノ君はしばらく下を向き、何かに納得したように頷き話し出した。

 「確かに八神部隊長の言うことは一理ある。つまり……」

 クロノ君の話してくれた内容は、今回の任務は救出ではなく、安否確認と言うこと。

 フェイトちゃん達と合流して状況を報告してから、救出かどうかの判断になるみたい。

 どうやら、上層部は24時間連絡が取れないくらいでは、砂嵐などの影響も考えられる事から、十分な対応をしてくれないとのこと。

 「せめて、救援信号を出してくれればもう少し大々的に動けるんだけどな。フェイト・・・執務官達の事だから、無事でいてくれるとは思うけど、やはり僕も心配でならない」

 クロノ君と目が合う。私は分かったよ。と言う返事の代わりに大きく頷いた。

 「さて、もう1人選ばなきゃだな」

 クロノ君は先ほど声を上げた二人を見てから、はやてちゃんの方をみる。

 「そやな、今回はスバルでいこうとおもう。ギンガは今他の案件のリーダーを任せられてるやろ?それからはずれてもらうとなると、色々厄介なんよ。それに、スバルならなんかあった場合、高町一等空尉や合流した後もランスター執務官との連携可能やし。どうやろ?ギンガ?」

 「…分かりました」

 ギンガは少し悔しそうに、下唇を噛みながら俯いてそう答える。

 その様子に私の胸がチリリとする。

 ギンガが先日フェイトちゃんに告白したと言う話を、はやてちゃんから聞いていた。

 どうなったのかは知らないけれど、今ギンガはフェイトちゃんの彼女なのかもしれない。

 そこまで考えると、また、胸がチリリとする。

 「急がせてしまうようですまないが出発は二時間後。なのは、スバル、ティアナとフェイトを頼む!」

 「頼んだで」

 そう言ってクロノ君とはやてちゃんは席を立つ。

 スバルが私の元に駆け寄ってくる。

 「なのはさん、今回よろしくお願いします。一度宿舎へ戻り荷物をまとめて来ます」

 「うん。スバルこちらこそよろしく。後で合流しようね」



 「なのはさん」

 宿舎へ戻る途中に声をかけられる。振り返るとそこにはギンガがいて、

 「あの、ティアナ執務官もですが、フェイトさんのことよろしくお願いします。フェイトさんすぐ無理するから、私心配で……」

 目に涙をためてギンガは訴える。その言い方は、まるで恋人を心配する言葉のよう。

 また、胸がチクリとする。

 それを悟られないように、

 「うん。大丈夫、任せて。必ず2人とも無事に連れて帰ってくるよ」

 笑顔で答えた。



 宿舎に戻り、準備を整えて時間をみると集合まではまだ、一時間以上有る。

 大きなため息とともに、ベットへ腰を下ろした。

 先程のギンガとのやりとりを思い出す。

 「つきあってるのかな?」

 誰に言うわけでもなく呟いてみる。

 さっきから、胸のあたりがチリチリとして落ち着かない。

 もちろん、ティアナやフェイトちゃんが心配と言うこともあるけれど、それとはまた違う感情があるのも確か。

 あの二人がつき合ってたとしても、私には何もいえない。だって私は……

 プープー部屋への来訪者のブザーが鳴る。

 「はい」

 と答えて開錠すると、

 「ちょぉ、ええ?」

 エアー音と共にはやてちゃんが入ってくる。

 「うん。いいよ。準備も終わったし。何か飲む?」

 「おおきに。仕事抜けてきてるから、少しだけ」

 コーヒーを用意していると、後ろからはやてちゃんに抱きしめられる。

 私の体が、一瞬ビクリと跳ねる。

 はやてちゃんの手がお腹まで回り少し力がこもる。

 「なのはちゃんほんま、無理せんといて、気いつけてな」

 「うん」

 コーヒーカップを置いて、はやてちゃんの手に自分の手を重ねる。

 「なぁ、なのはちゃんもう一度確認させて、うちらつきおうてるんよね?」

 「うん。そうだよ。はやてちゃん」

 「なんや、夢みたいでこうやって言葉に出して確認せななのはちゃんどっかに行ってしまいそうで、不安なんや」

 「……うん」

 体制を変えてお互いに向き合う、はやてちゃんは、そっと唇を寄せてくる。私のほっぺに軽く触れて、はやてちゃんの唇が離れ、私の首元に落ちる。

 「はやてちゃん?……んっ」

 首のあたりを強く吸われて、小さなリップ音とともに離れる。

 「堪忍な。こんなん嫌やろうけど……」

 眉毛を少し下げながら、申し訳無さそうにはやてちゃんが言う。

 もう一度強く抱きしめられて、

 「なのはちゃんが、帰ってきたら、続きしてもええ?」

 と耳元で囁かれる。

 私は小さく頷いた。

 コーヒーを一杯飲んでから、はやてちゃんは仕事に戻っていった。

 洗面所の鏡に写る自分の首元には、さっきはやてちゃんが付けた小さな内出血が映っている。

 さすがにそのままには出来ないから、化粧ポーチから、コンシーラーを取り出し上から塗る。

 すると、その跡は跡形もなく肌に吸い込まれていった。



 スバルと合流して、出航に必要な書類などを書き込む。

 艦に乗り込むと、流石に2人用と言われるだけあり、小さなコックピットと後部には簡易ベットが1つ置いてあるだけだった。

 車で言うところのワンボックス程度の大きさ。

 私達は自分の荷物を少なめにして、なるべく食糧を艦に乗せ出航した。

 目的の惑星まで、簡易転送して大気圏を抜けると、そこは前をみることも出来ないほどの砂嵐。

 通信機に赤いランプが灯っている。

 「通信不能だね。他にも地場が関係してるみたい。スバルしばらく操縦お願い。念話してみるね」

 「はい」

 集中して念話でティアナとフェイトちゃんに話しかける。

 雑音がひどくて、集中しきれない。

 (……なの………は…?)

 フェイトちゃんだ!小さく返ってくる。

 でも、やはり地場の影響からか、位置の特定までは出来ない。

 その時、左の視界に何か光ものを見つけた。

 「左!!救援信号弾!」

 「はい。確認しました。向かいます」

 信号弾が発射されたあたりを、入念に調べていると、砂嵐の目の前に巨大な壁が現れた。

 「スバル旋回」

 「はっ、はいっ!!」

 なんとか、回避できた。危機一髪だった。

 その位置から機体の高度を落とした所にフェイトちゃん達の調査艦はあった。

 どうやら、壁にぶつかった様子。

 「注意して、着陸しましょう」

 「はい」

 かなり、近い位置で着陸ができた。隣の艦の様子を見るために用意を行う。

 「大気は、通常だと言っていたけど、一応注意してね。それと、砂嵐がひどいので防護魔法を使うから、私から離れないでね」

 「はい」

 ハッチを開けると、突風と共に砂の粒が容赦なく襲いかかってくる。

 防護魔法を展開すると……!?異変が起きる。

 魔力が地面に吸われているような感覚に陥り、通常の倍?それ以上に魔力消費が大きい。

 なんとか、スバルのところまで防護しながら、砂嵐の中を進む。

 フェイトちゃん達の艦までたどり着いた時は、相当な魔力を使っていた。

 ハッチをあけて中にはいると、ティアナとフェイトちゃんは無事だった。

 正確には、フェイトちゃんは怪我をしてベットに横になっていたけれど、比較的元気そうだった。

 私をみるとフェイトちゃんは申しわけなさそうに眉を下げ、手を挙げる。

 ティアナからの状況の報告を聞く。やはり、先程の壁と艦が接触してしまったようで、その時にフェイトちゃんは左わき腹を強打したとのこと。簡易スキャンの結果は、肋骨にヒビが入ってしまって、その周りは打撲のためか赤黒く内出血している。

 ティアナが回復魔法を使い治療したが、うまく魔力の発動が出来ないので、痛みを緩和するくらいしか出来なかったと報告を受ける。

 「すいません。私の操縦ミスです」

 ティアナが頭を下げる。

 「ううん。今以上に砂嵐が強かったら、私達でもあの壁は避けられなかったよ」

 私は先程のことを思い出しながらそう言う。

 「私もそう思うよ。でも、フェイトさんもティアも無事で良かった」

 スバルは本当に嬉しそうにティアナの手を取りブンブンと振っている。

 「あーもーうっさい、ばかスバル」

 怒りながらも、ティアナも頬を染めてまんざらでもなさそう。

 二人のやりとりを横に私は、フェイトちゃんのベットへ近づく。

 起きあがろうとするフェイトちゃんの肩を押して、寝かせて手を取る。ベットの脇にしゃがみ込み目線を合わせる。

 「良かった。無事で」

 安心した所為かため息が漏れる。

 「ごめんね。心配かけて」

 紅い目が細くなる。

 「うん。本当に心配したんだよ。帰ったら、ご飯奢ってね」

 「そんなんでいいの?」

 フェイトちゃんの口の端が少し上がる。

 「約束ね」

 お互いに目を合わせて、笑いあって小さな約束を交わす。

 それから、気持ちを整えて立ち上がる。これからのことを話さなければならない。

 「さて、この砂嵐の中では、艦を操縦するのには2人必要ね。私とスバルで一度戻って救援隊を呼んできます。」

 「待って下さい。私に行かせて下さい」

 ティアナが声を上げる。

 「私とフェイトさんはここにきて随分経っていて魔力もほぼ残っていません。なのはさんはまだ、こちらにきたばかりなので、フェイトさんに何かあったときも対応出来るかと思います」

 ティアナの瞳をみると、どうやら、何をいっても譲らなそう。

 「わかりました。では、ティアナとスバルで救援隊を呼びに戻って下さい。私も一度自分たちの艦に戻り、食糧を分けてもらいます」

 即実行に移し、食糧を分けてもらい、ティアナとスバルの乗った艦を見送る。



 ティアナとスバルが出発して数時間位すると、さっきまでの砂嵐は嘘のようにおさまった。

 相変わらず通信機は壊れてしまっていたけれど、救援信号は復活したようで、発信することが出来た。

 これで他からも位置の特定が可能になるはず。

 「フェイトちゃん、救援信号生きてたよ。もう少ししたら救助くるね」

 「うん。よかった…砂嵐治まったみたいだね。なのは、少し外出たいな」

 「大丈夫?」

 眉を下げてきく。

 「うん。さっきまで、なのはが治療してくれたおかげで、ずいぶん良くなったよ。それに、ちょっと外の空気吸いたい」

 艦の出入り口のロックを外すと、そこには一面に砂の世界ときらめく星宙と大小合わせて3つもある月。

 その光景があまりにも幻想的で思わず、わぁ〜っと声が出てしまう。

 フェイトちゃんもわき腹を押さえながら立ち上がったので、反対側に回り込んで支えながら、外にでる。

 フェイトちゃんは艦の脚の部分に、寄っかかって、ひざを少し曲げてゆっくりと座る。

 私もその隣に座る。

 砂をひと掴みして、サラサラと下へ落とす。

 それから、視線を宙へ向ける。

 「きれいだね」

 「うん。すごく綺麗」

 そうつぶやいたまま、私達はしばらく景色を楽しむように、無言になる。

 どれくらいそうしていたんだろう?不意にフェイトちゃんが口を開いた。

 「それって、はやて?」

 なんの話だろうと首を傾げながら、フェイトちゃんをみると、相変わらずフェイトちゃんは月を見上げてて

 「その、首」

 と続けて言われて、ハッとする。いつの間にかコンシーラーは薄くなっていて、急いで隠すように、そこに手を当てて、俯く。

 「つき合ってるの?」

 フェイトちゃんは相変わらず上を向いたまま、少しだけ紅い瞳を細めてそう言う。

 答えられない。

 「フェイトちゃんだってギンガと……」



 「つき合ってないよ。答えは待ってもらっているけどね」

 フェイトちゃんはサラリと答える。

 「そ、そうなんだ。どうするの?」

 なんで、こんな質問するんだろう?聞きたくないのに、聞かずにはいられない。

 「なのは次第かな?」

 「何それ?」

 「はやてとは争いたくない。」

 「何それ?私の気持ちは?」

 「…………」

 「…………」

 「教えてよ」

 「えっ?」

 「なのはの気持ち教えてよ」

 こちらを向いたフェイトちゃんと目が合う。紅い瞳に捕らわれる。

 フェイトちゃんが好き。

 そう言ってしまいたい。

 でも今の私はその言葉を言うことは出来ない。

 「ずるいよ」

 そう声を絞り出すのがやっと。逃げるように目をそらす。

 「ここままなら、いいのに。このままなのはと2人っきりでここに居られたらいいのに。」

 フェイトちゃんをみると、また星空に視線を戻していた。

 「死んじゃうよ?」

 食料はそんなに沢山有るわけではない。

 「いいよ」

 「?」

 「いいよ。なのはとなら」

 フェイトちゃんは宙のにおいをかぐように、目を閉じてゆっくり深呼吸する。

 「っつ」

 深呼吸がわき腹に響いたみたいで、小さく呻いて押さえている。

 「大丈夫?」

 後ろ手に寄りかかっているフェイトちゃんを覗き込む。

 フェイトちゃんが視線をあげると、すぐ間近で視線がぶつかる。

 吸い込まれるように顔が近づく。

 吐息がかかる距離。

 触れ合う瞬間、私が少し顔をずらしたから、私のそこにはフェイトちゃんの唇は触れなかった。

 フェイトちゃんの右手が私の後頭部に添えられて、引き寄せられる。

 「んっ」

 一度唇が触れ合ってしまえば、その行為を止めることは出来なくて、貪欲に求めてしまう。

 「んんっ」

 唇の感触を確かめるように、強く押し当てたり、弱く触れ合わせたり、角度を変えて求め合う。

 自分の目頭が熱くなって、重力に従って雫が頬を伝う。そのまま、お互いの唇に消えていく。

 唇に水分が入ったことで、色濃くなったそこが少し開く。その隙間から、フェイトちゃんの柔らかい舌が侵入して来る…

 ゆっくりと探るように私の舌を捜し当てると、絡め取っていく。

 瞳からは、雫が次々とこぼれ落ちる。

 どれくらいそうしていたか分からないけれど、ゆっくりと唇が離れる。

 フェイトちゃんは私の頬に手を当てて指で涙を拭いながら、泣かないでとささやく。

 そう言うフェイトちゃんも後何回か瞬きしたら、零れ落ちてしまいそうなくらい、紅い瞳を潤ませている。

 唇を合わせてしまえば、もう隠しきれない気持ち。

 好き。

 胸が締め付けられるように痛い。鼓動が激しく耳元でドクドクと脈打つ。

 「なのは、泣かないで」

 その言葉に堰を切ったように、涙がポロポロとこぼれ落ち、喉がヒクつく。

 どうして、泣いてるのか分からないけれど、涙は止まってくれなくて、

 「うっ……くっ……」

 我慢しようと思えば思うほど、眼球を押し上げる。



 艦に戻ると当たり前の行為のように、お互いに求め合った。

 フェイトちゃんの傷を気遣って、私が上になる。

 人1人がやっと横になるスペースしかない簡易ベットで私達は裸で重なる。

 艦内はコックピットの窓から入る星と月の明かりだけで、薄暗い中お互いの肌の白がぼやけて浮き上がる。

 衣擦れの音と吐息。

 ベットの軋みと水音。

 それは、とても淫らな行為で、でもお互いに飽きることなく何度も求め合ってしまう。



 ティアナ達が出発してから、随分な時間が経過していた。通常であれば、そろそろ救援がくるはず。

 それが、分かっているのに、分かっているからこそ、ギリギリまでお互いを求め合う。

 「…なのは」

 「…フェイト…ちゃん」

 お互いの名前を呼ぶだけ。決して愛の言葉は囁かない。



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 情事のあとフェイトちゃんが不意に

 「はやてに……」

 と言ったから、その言葉に私の体がビクリとする。

 裸のまま、横向に抱き合っているフェイトちゃんにはダイレクトで伝わったはず。少し腕に力がこもりフェイトちゃんの胸に顔を埋める。

 「はやてに、言われたんだ。はやてがなのはに告白する前に、告白するけど良いのかって。…どうしてあの時駄目だと言わなかったんだろうって、ずっと後悔してる。」

 「フェイトちゃん…私、はやてちゃんと付き合ってるよ」

 「うん。……知ってる」

 どんなに綺麗ごとを言おうと、私たちの行為は、

 フェイトちゃんにとっては親友への

 私にとっては恋人への

 ……裏切り。



 終わり。





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